ワタシにとっては、不思議な映画でした。
チラシに載っているクロとシロは、かわいくない。でも、ストーリーは面白そうだったんで見る事に・・・
そしたら、スクリーンの中で自由に動き、しゃべるクロとシロは魅力的で、どんどん可愛く見えてきたんです。
声優さんに声を与えられ、スクリーンの中で暴れ回るクロとシロは、生き生きしてる。
特に、路上を走りまわるシーンは、ワクワクしました。
そして見終って、平面上に描かれたクロとシロの絵を見ても、かわいいと思う(笑)
能面のような顔だけど、見つめていると、ニヤッと笑ったように見えてきちゃうから不思議。
鉄コンワールドに、ワタシもハマッたみたいです。
原作は、松本大洋の同名コミックです。
義理と人情とヤクザの街〈宝町〉が舞台。
そこを自由に飛び回る〈ネコ〉と呼ばれる少年2人、クロとシロ。
二人には親は居なく、かつあげや、かっぱらいなどで、日々の糧を得て、助け合って暮らしてる。
年上のクロは「シロは自分が守る」と誓い、力で守るんだけど、実は心の部分はシロに守られてるんです。
名前が表すとおりに、クロとシロは相対する存在で、二人で一つだと思いました。
お互い、自分の足らない部分を、もう一人が持っているんです。
人間には、陰と陽、2つの部分が同居してると思うんです。
この映画は、その2つの部分を切り離して、クロとシロという個体にしてると思いました。
この映画は、見られた方、それぞれが惹かれる部分が違うと思います。
ワタシ的には、〈宝町〉という街が主役でした。
街全体が、生きてるっていうか、1つのキャラクターになってるんです。
その中で、クロとシロは生かされている。
宝町は、クロとシロにとっては、母親みたいな存在というか、街が、2人を育ててくれてると感じたんです。
2人は、暴力でかたをつける、いわゆる「第一級ぐ犯少年」です。
世間では、はみ出し者で、受け入れてもらえない存在。
でも、宝町では生きてゆける。育ってゆけるんです。
でも、その宝町に、開発の手が延びてきて、目障りな2人を殺そうとする。
この宝町の変貌していく様子が、今の時代の変貌と重なって見えてしまいました。
はみ出し者でも、生きてゆける場所は必要だと思うのです。
監督は、アメリカ人のマイケル・アリアス。
本作で監督デビューを飾ったビジュアル・クリエイターです。
鉄コンとの出会いは、今から10年程前だそうです。
彼は鉄コンの熱烈なファンで、愛してるんだなぁ〜と、作品を見て感じました。
アニメーション製作は「スタジオ4℃」です。
色あいが好きです。中間色を多く使っていたので、温かみを感じました。
宝町は、上海とかの下町っぽかったり、日本の下町っぽかったり、いろんな懐かしい情景が詰まったような町並みでした。
ビルの形や、看板とか全てに惹かれました。
2人の家(車)はスバルのてんとう虫じゃないかな?
走ってるのは、見た事ないけど、店頭に置物にしているのを見た事あります。
小さくて、カワイイんです。
そして、声優陣は全て俳優さんでした。
プロを使わなくて、コケる場合がありますけど、今回のそれは大成功だったと思います。
やはり、クロ役の二宮和也君が1番よかったです。キャラクターにピッタリでした。
シロ役は、蒼井優がやってて、始めシロは女の子と勘違いしてしまった所はあるけど、上手かったです。
彼女って、限界が見えない女優さんですね。
その他にも、伊勢谷さん、クドカン、本木さん、田中さん・・・それぞれのキャラクターにタブッちゃう程のキャストでした。
この作品は、ハードボイルド。そして、大人が味わうアニメです。
幼い頃、自分が育った街に憧憬を持っている方なら、きっと何かを感じる映画のような気がする。
そして、この映画を見た後、あなたの心の中にはクロとシロが住みついてるかも。