2007年02月07日

鉄コン筋クリート

ワタシにとっては、不思議な映画でした。
チラシに載っているクロとシロは、かわいくない。でも、ストーリーは面白そうだったんで見る事に・・・
そしたら、スクリーンの中で自由に動き、しゃべるクロとシロは魅力的で、どんどん可愛く見えてきたんです。
声優さんに声を与えられ、スクリーンの中で暴れ回るクロとシロは、生き生きしてる。
特に、路上を走りまわるシーンは、ワクワクしました。
そして見終って、平面上に描かれたクロとシロの絵を見ても、かわいいと思う(笑)
能面のような顔だけど、見つめていると、ニヤッと笑ったように見えてきちゃうから不思議。
鉄コンワールドに、ワタシもハマッたみたいです。


原作は、松本大洋の同名コミックです。
義理と人情とヤクザの街〈宝町〉が舞台。
そこを自由に飛び回る〈ネコ〉と呼ばれる少年2人、クロとシロ。
二人には親は居なく、かつあげや、かっぱらいなどで、日々の糧を得て、助け合って暮らしてる。
年上のクロは「シロは自分が守る」と誓い、力で守るんだけど、実は心の部分はシロに守られてるんです。
名前が表すとおりに、クロとシロは相対する存在で、二人で一つだと思いました。
お互い、自分の足らない部分を、もう一人が持っているんです。
人間には、陰と陽、2つの部分が同居してると思うんです。
この映画は、その2つの部分を切り離して、クロとシロという個体にしてると思いました。

この映画は、見られた方、それぞれが惹かれる部分が違うと思います。
ワタシ的には、〈宝町〉という街が主役でした。
街全体が、生きてるっていうか、1つのキャラクターになってるんです。
その中で、クロとシロは生かされている。
宝町は、クロとシロにとっては、母親みたいな存在というか、街が、2人を育ててくれてると感じたんです。

2人は、暴力でかたをつける、いわゆる「第一級ぐ犯少年」です。
世間では、はみ出し者で、受け入れてもらえない存在。
でも、宝町では生きてゆける。育ってゆけるんです。
でも、その宝町に、開発の手が延びてきて、目障りな2人を殺そうとする。

この宝町の変貌していく様子が、今の時代の変貌と重なって見えてしまいました。
はみ出し者でも、生きてゆける場所は必要だと思うのです。

監督は、アメリカ人のマイケル・アリアス。
本作で監督デビューを飾ったビジュアル・クリエイターです。
鉄コンとの出会いは、今から10年程前だそうです。
彼は鉄コンの熱烈なファンで、愛してるんだなぁ〜と、作品を見て感じました。

アニメーション製作は「スタジオ4℃」です。
色あいが好きです。中間色を多く使っていたので、温かみを感じました。
宝町は、上海とかの下町っぽかったり、日本の下町っぽかったり、いろんな懐かしい情景が詰まったような町並みでした。
ビルの形や、看板とか全てに惹かれました。
2人の家(車)はスバルのてんとう虫じゃないかな?
走ってるのは、見た事ないけど、店頭に置物にしているのを見た事あります。
小さくて、カワイイんです。

そして、声優陣は全て俳優さんでした。
プロを使わなくて、コケる場合がありますけど、今回のそれは大成功だったと思います。
やはり、クロ役の二宮和也君が1番よかったです。キャラクターにピッタリでした。
シロ役は、蒼井優がやってて、始めシロは女の子と勘違いしてしまった所はあるけど、上手かったです。
彼女って、限界が見えない女優さんですね。
その他にも、伊勢谷さん、クドカン、本木さん、田中さん・・・それぞれのキャラクターにタブッちゃう程のキャストでした。

この作品は、ハードボイルド。そして、大人が味わうアニメです。
幼い頃、自分が育った街に憧憬を持っている方なら、きっと何かを感じる映画のような気がする。

そして、この映画を見た後、あなたの心の中にはクロとシロが住みついてるかも。


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